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東京国立博物館
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「平安の秘仏」展 仏像好き必見!!

トーハクの本館5室の特別展「平安の秘仏-滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」に行ってきました。滋賀県甲賀市にある櫟野寺には、重要文化財に指定される平安時代の仏像20体が伝わり、その20体全てを寺外で公開する初めて、という展覧会です。夏に東京藝大美術館で「観音の里の祈りとくらし展Ⅱ-びわ湖・長浜のホトケたち-」を見ましたが、最近はあのあたりの仏像に注目のようですね。

10月の三連休中の午前、秋晴れでもなくぎりぎりまだ雨でもないので、また夜には野外映画のイベントもあるため、きっと今日は混むねと、若干の覚悟を持って行きましたが、全く並びもなく入館入室し、室内も適度の人出で、ゆっくり見ることができました。

入室してすぐ、部屋の正面に鎮座するのは、櫟野寺の御本尊「十一面観音坐像」の大きさと存在感に、しばらく言葉を失ってしまいました。「これはすごい・・・」。本体は全長3.2m、台座と後背を入れると5m以上の、日本最大の十一面観音菩薩「坐像」。巨大な像ですが、頭から胴までを1本の木から掘り出した一木造。また大きさばかりではなく、山里の寺のしかも秘仏のためか、幾多の戦乱による火災等で悲惨な憂目にあっている京都の仏像たちと違い、状態が極めて良く美しく輝き、更にご本体も単眼鏡で見上げる頭上の十一面のも、表情も良く、目が釘付けになりました。それを、寺の御開帳ではおそらく不可能なほど間近で、照明を受けて輝くお姿で、また360度ぐるっと見て回れる(つまり、身体の厚みや後ろ首筋の髪、そして後ろ側の十一面観音のお顔もなんとか見える)のですら、本当にすごいことです。
他も、怒りの表情ながら親しみやすさも感じる毘沙門天立像、優しい表情の吉祥天立像、優しさと繊細さも感じられる安産祈願の地蔵菩薩坐像、薬師如来坐像、みななかなか魅力的な存在感の仏像ばかりです。

私は全く知りませんでしたが、櫟野寺は奈良県や三重県に近い滋賀県最南端の、甲賀市の外れにある天台宗の古刹だそうで、総本山は比叡山延暦寺の末寺。この甲賀地方では最大規模のお寺なのだそうです。ですが最寄り駅からバスもない、人里離れた田園まで地帯にあり、なかなか訪れるのは難しそうな場所です。元々は、天台宗の開祖、最澄が銘木の産地として古代から知られた甲賀地方へ視察に来た際に、インスピレーションを感じてこちらにもお寺を開いた、という言い伝えがあるのだそうです。

この展覧会で展示されている仏像は、先にも記しましたが全20体が全て重要文化財です。ちょうど平成30年10月に、秘仏本尊である「十一面観音菩薩像」の御開帳を行う前にと、本堂と収蔵庫の大改修工事を実施することとなり、今回の一挙展示はこの機会を活用して実現したものなのだそうです。ラッキーですよね。

櫟野寺の仏像は、制作された時期は10世紀~12世紀まで様々で、年代により若干の違いはありますが、ちょっとふっくら下膨れしたお顔や、ペチャっとした鼻スジなどの顔つきや、プロポーションの類似性を感じます。これは、「甲賀様式」と呼ばれる独特のスタイルなのだそうです。甲賀地方仏像のは、平安~鎌倉期の定朝や運慶といった京都や鎌倉の仏師の影響下にはない、地元の仏師や櫟野寺の僧侶が歴史的に制作してきたからだ、と言われます。その特徴は公式図録に詳しく解説されています。また後半の時期の作は、天衣の表現がとても美しいです。
一本の木に、祈りとともに一刀と持てる技の全てをもって生命を吹き込んだ、平安の田舎仏師たちの、素晴らしい技と思いが満ちた、そんな展覧会だったと思います。

 展覧会の開催を記念して、みうらじゅん氏といとうせいこう氏による「櫟(ラク)」普及委員会も発足、櫟野寺オリジナルグッズも制作されました。「フェリシモおてらぶ」とのコラボグッズや、展覧会特別バージョンのご朱印も特設ショップで販売されています。最近なぜか御朱印マニアが増えている?ということも聞きました。また、マルシェもあります。
こちらの内覧会の記事は、とても良かったです。見てから行くべきだったと思いました。

この日は一緒に、東京藝大美術館「驚きの明治工藝展」他と都美術館「ゴッホとゴーギャン」展、またびわ湖長浜 KANNON HOUSEを見ました。

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